PSP「おおかみかくし」レビュー
ようやくPSP版「おおかみかくし」をクリアしたので少々レビューなど.
■システム
ゲームというよりはサウンドノベル.「アクトノベル」という表現をしている.
選択肢分岐によってストーリが変わるマルチエンディング.
また特定のエンディングを迎えると,新たなストーリルートが出現し,
物語を別の展開で追う事になる.
このゲーム,「アクトペディア」と呼ばれるシステムを売りにしている.
ウィキペディアのような語彙集のこと.
劇中では語られなかった細かい部分の説明も記述され,物語の理解を深める.
が,ストーリの進行と共に新たな説明が加わってくるので
自分がどこまで読んだのか分からなくなって未読部分を探すのが面倒になる.
また,アクトペディアではエンディングルートの分岐が図で示される.
この分岐はイメージ的なもので,選択肢に対応した物でもないし
分岐やルートを選択して,その部分からストーリを開始できるわけでもない.
結局,どのエンディングを迎えたかのチェックシートにしかならない.
周りにあるアイコンとの関連も意味不明.
正直,売りにしているほど便利な物じゃない.
■ストーリ
原案/監督は押しも押されもしない竜騎士07.
「ひぐらしのなく頃に」や「うみねこ〜」でならした,氏らしい伝奇物語.
父親の都合で山深い嫦娥町に引っ越してきた主人公,博士.
そこは古くからの独特な風習を残している旧市街と,
開発によって外部からの人間が住むようになった新市街の二つが存在する町.
博士は隣の家の女の子やらクラスメイトから熱烈な歓迎を受け,
それに戸惑いながらも普通の高校生活を送るのだが,少しずつこの町の隠された部分に触れてゆく.
全体的に軽い文体で読みやすい.
最初は主人公の日常が描かれるだけで,なかなか事件が起きない物だから少々退屈もするかも.
また言葉の誤用や,そこでその言動はね―だろ,みたいな部分も(個人の好みだが)あったりする.
ストーリは,イントロ編,ヒロイン別に4編,また別の登場人物に主観を変えた物語が4編と,
最終的な回答編,それとクリア後のおまけ的なもので3編分のエンディングが用意されている.
(バッドエンドは含まず)
速鳥の総プレイ時間は50時間弱.
■ビジュアル/サウンド
キャラクター原案は PEACH-PIT.
メインヒロインの女の子たちはとても可愛いんだけど,他がどうもねぇ…
特に青年以上の男となると,途端とヘタレてくる.
こっちは別の人がキャラデザを手がけたのか?
それとも PEACH-PIT は少年少女しか描けないのか?
サウンドはロマサガや聖剣で有名な伊藤賢治.
タイトルの曲は良かったんだけど,劇中のサウンドはあまり印象に残らなかったなぁ…
逆に曲の数が少なくて,使い回し感が印象的だったかも.
うーん,イトケンはバトルミュージック作ってればいいよ.
■総評
正直,主人公のヘタレっぷりに嫌気がさす部分もあり,
そんなところは,今日日のライトノベルそのものかもしれない.
基本的に一本道ストーリでプレイヤ自身の意志を反映する事は出来ず,
主人公に自分を重ねすぎると気分を害されるだろう.
しかし,なんだかんだと言っても感動した作品だった.
基本的に悲劇で,そのたびに涙してしまう.
特に,主人公を慕うヒロインの五十鈴ちゃんとの展開は,
ベタベタなのは分かっていながらも,もうね,もうね… アレは泣ける.
ああ,アニメ化が楽しみだ.
その一方で,真のエンディングとなる回答編のエンディングは完全に白けた.
あまりに出来すぎな流れで,ご都合主義とも言えるハッピーエンド.
言いたい事は分かるんだけど,そんな展開は… ガッカリ.
こっちのストーリでアニメになってなきゃいいんだが.
また,別の視点で物語に触れるストーリでは,関係者の様々な思いに触れられ,
クリア後のおまけ編では一転してコメディータッチな楽しい話が繰り広げられる.
基本的に一つの事例に対する物語だが,結構なボリュームがある.
伝奇モノとは言うが,それほどおどろおどろしさもないしグロイ表現があるわけでもない.
どちらかというと恋愛物や友情物の側面が強いので,ホラーが苦手な人にも大丈夫だろう.
逆にそういった要素を求めている人には物足りなく感じると思う.
■リンク
おおかみかくし公式サイト:KONAMI コナミ製品・サービス情報サイト
物語の舞台となる嫦娥町案内サイト:http://www.town.jouga.i-revo.jp/kanko/index.html